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Staff Blog

更新日:2016.10.04

【音楽と人生 あるフルート講師のつぶやき】 ~椿音楽教室~

ソロ・Soloというのは、とても魅力的な言葉でありながら、怖いことばでもあると思います。人間は不思議なことに矛盾した考えをもつ生き物です。
時には他人と区別されたくて自分の特別さをアピールしますが、またある時には集団の一人になって目立たないように皆と同じことをしたいと感じます。確かに、たくさんの観客に注目される時ほど刺激的なことはありません。一方、そのリスクとプレッシャーは軽視できないものです。
 中学校一年の時の事です。学校のシンフォニック・バンドに入ったばかりだった私はできるだけソロを避けるタイプでした。自信がなくて、バンドの指揮者に叱られるのを怖かったので、リハーサルにせよ、コンサートにせよ、いつもミスしているかどうかの心配をして、ほかのフルートメンバーから浮いてしまわないように気をつけていました。皆とシンクロし、同じことをしていれば安心で守られている気がしたのです。
そんな私ですが中学校二年の時がターニングポイントとなりました。学校バンドでは、定期的にアセスメントが行われ、指揮者の指示通り音階や指定された曲をやったりすることになっていたのですがその時、私はアセスメントの終わりに、突然に「次のコンサートでソロをやってみないか」と指揮者から言われたのです。一瞬「え、私でいいの」と疑いましたが、自分の努力が認められたというあまりの嬉しさに頷きました。当時演奏予定の曲はモーツァルトに作曲され、有名なフルートコンチェルトニ長調K.314だった。テクニックの部分は難しくはありませんでしたが、私からみて初ソロになるので、緊張して怖くなってしまいました。登場する時の歩き方をはじめ、演奏中にミスをしたらどうすればいいか、や観客を楽しませられなかったらどうしようか、などいろいろな問題で悩んだあげく、リハーサルの時も集中できませんでした。そんな臆病な私をしっかりと叱られてくれたのは指揮者Ng先生です。「自信を持ちなさい。わざわざチケットを買って足を運んでくれるお客さん達はこの演奏を楽しみにしているのです。その期待を裏切るつもりですか。」と厳しく指摘されました。私は今になっても、指揮者の先生の言葉とあの時のソロに対して感謝しています。それ以来私は自分のスキルを活かし、披露するのは恥ずかしいと思うのをやめ、ますます人の前で話したり演奏したりするのが好きになりました。今こうして日本に留学して一人暮らしをしている事も昔の自分では想像もできなかったようなことです。
 音楽だけではなく、人生においてもそうでしょう。子供のように、いつも誰かに守られて助けられるわけにはいきません。自力で問題に向き合い、解決しないと成長できないものです。それこそが、大人になるというものなのではないでしょうか。