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Staff Blog

更新日:2016.08.10

モーツァルト〈鎮魂歌〉②

昨日の続き

11月20日、病状は急激に悪化してしまいます。
いよいよ床に就かざるを得なくなってしまいますが、それでも心血を注いで作曲に没頭します。

そして12月4日〈ラクリモーサ〉の部分まできて、ついに筆はとまりました。
朝になり友人・弟子たちを呼び寄せたモーツァルトは、彼らとともに未完成のレクイエムを歌い、涙にむせびながら〈ラクリモーサ〉の仕上げを弟子のF・ジェスマイヤーに指示します。そして翌5日の夜、正確には午前0時55分永遠の眠りについたのです。

奇妙な死をもたらすことになった〈レクイエム〉の依頼者はヴァルゼックという伯爵で、彼は亡くなった妻のために〈レクイエム〉を演奏させ、それを自分の作曲として発表しようとしたこと、鼠色の服を着た不気味な男はその使いであったことなどが後からわかりましたが、作曲中のモーツァルトにとって、依頼者の事などはもはやどうでもよかったようです。
恐れ、疲れ、諦めから悟りをひらいたモーツァルトは、ひたすら自分にとって白鳥の歌となる作品の完成を目指して病と闘ったのです。

未完に終わった〈エクイエム〉の結末はどうなったのかというと、これはさきのジェスマイヤーがモーツァルトの断片的な楽想とその手法を頼りに、彼の死後2か月をかけて全曲を完成しました。全体は次のように構成されています。

(1)入祭文
(2)キリエ
(3)続唱
(4)奉献文
(5)サンクトゥス
(6)アニュス・デイ
(7)聖体拝領誦

「涙の日」以下、ジェスマイヤーによるものとそれ以前とを比べるとオーケストレーションその他の点で明らかに差異は感じられるものの、全体的には見事な仕上がりを見せており、古今の名曲、例えばベルリオーズ、ヴェルディ、ブラームス、フォーレらの「レクイエム」と並べても、真っ先に置かれるほど、絶大な人気を誇っています。