更新日:2016.06.17
【忘れられない演奏②】~椿音楽教室~
今考えれば、あの時は夢みたいで、あまり実感もわかなかった。ごく普通にフルート部の一員として演奏してきた私は、偶然のアセスメントで指揮者に「ソロをやってみないか」と言われて、あまり深く考えずに「はい」と返事してしまったのだ。そんな私に対して、指揮者は少し心配そうに、「モーツァルトのフルートコンチェルト、全部ですよ」と特に強調していた。今あの時の会話を振り返って考えると、おそらく私に、ソロの責任を背負えるかどうかの確信が持てずに動揺していた指揮者に対して、私ならできるということを証明して見せようとしていたのだと思う。本番まではわずか三ヶ月で、毎日最低2時間の練習時間を確保した上、毎日二回以上そのコンチェルトの手本として、フルート奏者エマニュエル・パユの演奏を繰り返し聴きながら、自分が舞台に立つ様子をイメージトレーニングしていた。そして、コンサートの日を迎え、バンドの皆さんの応援があっても緊張してたまらなかった私は、演奏開始前30分、最初のアイテムのため指揮者とともにスタンバイした。そして名前と曲のタイトルが呼ばれて拍手で舞台に上がった瞬間、頭が真っ白になって、何も考えられなくなった。とにかく全力を出すしか選択肢がなかった。演奏する時、「頭より体」と元フルート講師がそう言っていた。演奏に集中していると、考える暇がないことを私はその時身をもって知った。
