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Staff Blog

更新日:2016.05.13

【蒙古音楽④】~椿音楽教室~

かれらの住いであるフェルト製の天幕である包の中で、茶色になった白い髭を長くのばした弁髪の、羊飼いの老人の馬頭琴の演奏をきかせてもらったことがあった。そのときの曲目の中に、成吉思汗の一代記の一節があった。これは語りである。まず前奏がしばらくあって楽器のそれは一休みとなり、やおら蒙古語で語りはじめる。いいかげんくたびれたかと思われるところまで来ると(あるいはちゃんときまっているのか)語りを止め、馬頭琴の演奏となる。
そして演奏に疲れたかな、と思われるあたりに来ると、また語りとなる。
おそらく語りの部分のあとの情景描写が演奏の部分なのであろう。あるときは勇ましく、あるときは悲哀に満ち、あるときは大乱戦を思わせる。案内をしてくれた蒙古の青年は、「お国の浪花曲ににているでしょう」といった。
「聖山」という独奏曲もきかせてもらった。まことに幽玄な味わいのものであった。ただしその昔のかの星からきた大将が伝えたかったものであったかどうかはわからない。

ところで蒙古では、馬はこちらの下駄のようなものだ、といわれている。なにしろ蒙古は、土地が広いのである。隣にいくのにも馬にのらなければならない。だからどの家にも馬はいるし、子どもたちは鬣につかまって裸馬に乗っている。大きさは現在われわれが日本で見る馬よりもはるかに小さいが、尻尾はやたらと長い。地につきそうなのもいる。