更新日:2017.04.13
【採寸】~椿音楽教室~
例えば、ミュージカルで音楽を上演するとき。芝居のBGMとして楽曲を流すとき。PA上でそのバランスを整えるのは作曲家ではなく音響スタッフだ。
縁あって音響スタッフとしての仕事の一端に関わらせていただくことになったのだが、彼らの仕事がいかに膨大で緻密でかつ体力にものを言う尊敬すべき職業かを、身を持って体験することになった。
音響の仕事は(規模などで差はあるものの)、マイクで拾った役者のセリフのバランス調整、それに加えBGMやSEのバランス調整、タイミング調整、そして自前で録音をする場合は録音のセッティングなども範囲内だ。
こちらのコラムで、その仕事たちのごく一部を紹介しようと思う。
さて、芝居の音響のアシスタントとして仕事をするのだが、その日は舞台の下見の日だった。
先述した音響のバランス調整は、ミキサーという機械で行い、タイミング調整はサンプラーという機械で行う。そして声を録音する場合はそれ専用のマイクを置かなければならないの。だがそのマイキングプラン、持ち込み機材寸法などは、会場のスペースの寸法をわかっていないと持ち込みできるかどうか、プラン通りのマイキングができるかどうかを判断できないのだ。
下見の当日、筆者は音響のチーフにホールのあらゆる場所の採寸と写真の撮影を頼まれたのである。
まさか、作曲を勉強していて仕事でホールの採寸をすることとなるとは! 人生どう転ぶかわからないものである。
実は、メジャーを使った採寸にはやり方があるらしい。業務用メジャーを身内で借りたときに付け焼刃で教えてもらい、スマホのおかげで数年間誇りをかぶっていたデジカメを取り出していざ出陣である。
ホールでは、ホール付きの音響担当の方が大変丁寧に打ち合わせをしてくださり、採寸のときも嫌な顔一つせずに手伝ってくださったりもした。
作曲家の作った音楽を流してくださる音響スタッフの仕事。そのうちのただ一つを取っても非常に地道なことの積み重ねである。